Daisuke
今回はTVアニメ龍の歯医者の感想を書いていこうと思います。
- スタジオカラー制作によるアニメーション作品です。
- 2017年2月18日、25日にNHK BSプレミアムで放送されました。
- 放送後、音響を一新した特別版が劇場上映されています。
- 監督を務めたのは鶴巻和哉氏、脚本は舞城王太郎氏、榎戸洋司氏です。
- 制作統括、音響監督を庵野秀明氏が担当されています。
最初に感じた事
良い作品だ。
画面が良すぎてテンションを押さえるのに必死になりました。
ただ、とても恐縮ながら、2017年公開のこのアニメの存在を僕は知りませんでした。割と最近知って、dアニメストアでお気に入りしていました。
スタジオカラーが制作かー和製ファンタジーも作ったりするんだなー。ふーん。くらいの軽い気持ちで観始めたのでした…
マチ子
Daisuke
しかしながらですね、観始めたらやっぱりすぐに釘付けになるわけですよ。すっごく良かった。特に絵が。
ちょっと強引な女の子という性癖
偏見ですが、エヴァってこの良さありませんか?
ミサトさんやアスカみたいな、ちょっと強引な女性キャラに手を引っ張られてついていくときのような、ちょっとドキドキする感じ。そういう性癖が、この作品にもあるように思いました。笑
龍の歯医者のあらすじ
彼の国には龍が棲んでいる──
神話によれば、古の人々との契約により、龍は人を助け、人は龍を助けるという…舞台は “龍の国”。
主人公は、国の守護神 “龍”を虫歯菌から守る新米・歯医者の野ノ子。隣国との戦争が激化する中、ある日彼女は、龍の歯の上で気絶した敵国の少年兵を見つける。
少年の名はベル。
大きな災いの前に龍が起こすと言われる不思議な現象で、巨大な歯の中から生き返ったものだった。自らが置かれた状況に戸惑うベル。そして彼を励まし、彼を龍の歯医者として受け入れる野ノ子。
激しい戦いに巻き込まれながら、二人はやがて自らの運命を受け入れて行くことに…
©舞城王太郎,nihon animator mihonichi LLP. / NHK, NEP, Dwango, khara
作画がまじで良い
まず線の質感がたまらんです。鉛筆で引いたような手書きっぽい線の温かみや水彩絵の具で描いたような余白の多い背景。
キャラの顔は輪郭とか上まぶた、眉の形、とにかく形状が美しく、そこだけでも見惚れます。
どのキャラもめちゃくちゃバランスがいいし、重心や感情表現のポージングも良いです。
表情も自然だし、さらにそこに乗っかってくる声優さんの演技力がさらにクオリティを引き上げてくれています。
アニメ観てこんなにテンションが狂いそうになる事ってそうないと思うけど、この作品マジでいい。良すぎる。
Daisuke
どろどろ君
虫歯のデザインも素敵なんですよねぇ。
語弊を恐れずに言うと、虫歯は新劇版の使途っぽいんですが。
CGを使って表現されているシダ植物みたいな形状のやつとか、歩行型のとかラミエルみたいな結晶型のやつもいました。
生き物のようにも見えますが、虫歯たちの存在は、荒魂(アラタマ)の類らしいです。小さな雑菌系のお化けという感じでしょうか。日本らしくて良いですね。
せっかくなんで、出てきた虫歯をまとめてみました。
- ヨナキ虫
オタマジャクシのような目玉っぽい虫。歩行型。 - アブク虫
一番よくいる奴っぽいです。フジツボのように歯に寄生してました。 - ヤジリ虫
矢じりのような見た目。クラゲのような形状。 - ヒカリ虫
絵で描いた桜の花びらのような形状の虫。 - ニョロリ虫
にょろにょろした虫。ヒルに似ている気がしました。 - ムクロ虫
死骸を食べる。なぜ食べるんだろうか… - カブリ虫
四角いゼリーのまとまりみたいな見た目。転がる。 - 天狗虫
やばい奴。
生きる、目的。(以降ネタバレあり!)
見た目の話ばかりしてしまいましたが、本題はこちら”生きる目的“です。この作品の中で語られる、様々な”死生観“。
この作品は”よみがえり“によって死の淵から蘇った敵兵の少年”ベル“と新米歯医者の”野ノ子“が中心となる物語なのですが、歯医者たちは皆、いつか来る自分の死の時”来る際(キタルキワ)“を知っています。
ベルは、自分たちの死を受け入れているともとれる死への姿勢を、理解する事ができずにいるようでした。
歯医者の中の誰かが死んだ時も悲しむのではなく、葬儀的な建前のようですが、献杯をしていたり、”死“を別れというよりも、”昇華“のようにとらえている様子が印象的でした。仏教が浸透する以前の“神を重んじる日本“のようなイメージなのでしょうか。
龍に乗ってたり魑魅魍魎(虫歯)が出てきたりしますし、歯医者もどこか山伏を思わせる格好をしているのはそれらを表現しているのかもしれませんね。
そうなると彼らの”死“に対する考え方というのは、現代の僕たちが想う死の在り方とは、価値観が異なっていたのかもしれません。
三島由紀夫の死生観
ちょっと話はそれますが、小説家の三島由紀夫という人をご存じでしょうか?
いわゆる文豪と言える小説家ですが、戦後の昭和で、市ヶ谷の自衛隊駐屯地にてクーデターを起こしたうえに”自決“によって生涯を閉じた、ぶっ飛んだ侍です。
その三島由紀夫が死生観を語った映像の一部がYoutubeにあったのですが、歯医者たちの価値観と少し似ているなと思ったので貼っておきます。
なんとNHKアーカイブスの動画なんですよね。
終戦を経験しているからこその価値観ともいえるかもしれませんが、三島由紀夫の死に対する価値感や、”人は自分のためだけに生きられるほど強くはない”という考えを、僕は尊いと感じました。
僕たちはいつの間にか”死“を布団の上で看取られて迎えるのが当然と思うようになってしまったのかもしれませんね。
生きる意味。ちゃんと持って生きていきたいです。
印象に残ったシーン
印章に残ったのはクライマックスで、ベルがブランコに撃たれるシーンですね。
撃たれたベルは過去に死にかけた思い出を独り言のように野ノ子に向けて語り掛けるのですが、ベルって運命を受け入れている野ノ子や歯医者の価値観には反対しているのに、自分が死ぬ瞬間は、抗うどころか、平然と受け入れてしまっているように見えるんですよね。
自分の痛みには鈍感なくせに、人の痛みには敏感な…というセリフ、ほかの作品で見かけた気がするけど、ベルもこういった思考なのですかね。困ったお人好しです。
それはそうと、ベルが地上でブランコに奪われた銃、最後ベルの手に戻ってきてましたね。
ちなみにこのリボルバー銃、一旦停止して見てみたら珠を持った龍の手が刻印されていたんですが、気が付きましたか?
この龍が持つ珠はドラゴンボールなどの作品でも象徴的なアイテムですが、”如意宝珠(にょいほうじゅ)“って呼ばれていて、どんな願いもかなえてくれるという言い伝えがあるらしいです。この球の刻印がある銃を、ベルはきっと取り戻したかったのでしょうね。
最後に
この作品で何度か耳にした事。”生きる目的“。”ぼくらが旅に出る理由“をテーマに選んでいるのも、そのテーマ曲があまりにも抜け感のある清々しい編曲にしてあるのも、死というのは、生きる理由でもあるんだよ。と言われたようにも感じました。
というわけで、今回はここまでがTVアニメ-龍の歯医者-の感想でした!
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!