その塊はあまりにも古くから そこに存在したために
殆どの人々が 地形の一部だと信じていた
どんな仕掛けがあるかなど 知っている者はいない
出典:弐瓶勉『アバラ 上』
Daisuke
今回は当ブログの漫画カテゴリ初投稿、僕の激推し漫画”アバラ“の感想を書いていこうと思います!
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- 弐瓶勉氏による漫画作品です。
- ウルトラジャンプ(集英社)にて2005年6月号から2006年4月号に掲載。
- 単行本は上と下の全2巻です。
- あの有名な”ヨーピヨーピ”はこの作品に出てくるセリフです。
この”アバラ“という作品は、多くのアーティストに影響を与えており、22年10月に放送が決定している『チェンソーマン』もこの作品に大きく影響を受けているそうです。
作者の藤本タツキ氏がコミックナタリーの記事で”『ポップなアバラ』を目指して描いています! “と述べています。
「チェンソーマン」300万部突破、藤本タツキからのコメント&イラストも
最初に感じた事
絵がかっこよすぎる!
当時僕はたまたま行った病院の待合室に置いてあったウルトラジャンプのページをめくったのがきっかけでした。
単行本下巻のちょうど始まった所でした。絵が凄くかっこよかったのと、さっぱりわからない話の尖り方に、僕のワクワクは止まりませんでした。
“こんなすげぇ漫画が世の中にあったのか“と思い、病院の帰りに本屋へ駆け込んで、アバラ上下巻と、当時連載していたバイオメガ3巻くらいまでを買って帰った事を覚えています。
あらすじ
途方もなく巨大な廟がそびえ立つ世界。
人間を捕食し成長する白奇居子(シロガウナ)の出現により、平穏は破られた。謎の男・駆動電次は、正体不明の異生物に唯一対抗できる人型兵器・黒奇居子(クロガウナ)へと変態し、壮絶な戦いに身を投じていく──。
事態の裏に見え隠れする企業・第四紀連とは? 殺戮の限りを尽くしながら廟を目指す白奇居子の目的とは?
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目的、理由、いつからなのか、何者なのかもわからない。だが面白い。
そう。普通漫画やアニメの物語は大抵、
誰が、いつ、何処で、何を、なぜ、どれくらいなのかを受け取り手が理解しやすいように作られていることが多いかと思います。
ですが、アバラにはそれらが存在していません。いうなればこの世界。現実と同じなのですね。
例えば地球がなぜ存在しているかなんて、知っている人は恐らく存在しません。そもそも、存在している理由などない可能性が高いように思います。
そのくらい当たり前のように、アバラでは人の住む世界の中に”恒差廟(ごうさびょう)”が存在しています。
“廟“という言葉自体、僕はあまり聞きなれないように思ったので調べてみると、主には死者を祀る施設や場所を指しているようです。
つまりお墓や仏壇をはじめ、神殿、寺院なども廟という概念に含まれることになるようです。
恒差廟のほかにも正体不明の生物、奇居子(ガウナ)や太古から存在しているらしい組織”第四紀連“など、ほぼすべての情報は作中では説明されません。
それでも面白いのは、理由や目的が不明な分、考える事を楽しむことができる要素が数多く存在しているからなのではないかと思います。
また、弐瓶作品では、アバラ以外の作品に、同じ名称、似た性質のものが多く出てくるのが特徴的です。
奇居子については、アニメ化もされた有名な作品”シドニアの騎士“でも人類の脅威として描かれています。
でも奇居子ってなんなの?
結論から言ってしまえば謎の生命体なのですが、海にいる生き物”ヤドカリ”を古い呼び方で寄居虫(ごうな)と呼ぶらしいので、元はこの”ごうな”がモデルとなっているのではないかという説があります。
また、ガウナ以外にも、弐瓶作品には複数の作品にまたがって登場している存在や企業などがあることから、いわゆる”スター・システム“のような存在と僕は考えています。
とはいえ、いくつかの登場作品があるようなのでまとめてみました。
少なくとも、3作品で”ガウナ”という同じ名称で呼ばれています。
- シドニアの騎士
太陽系の外で人類が遭遇した外宇宙生命体。
丸い本体が胞衣(エナ)という別の物質で覆われており、本体はカビという物質でしか貫くことができない。 - アバラ(ABARA)
白奇居子、黒奇居子の2種類が登場。人には感知することができないほどのスピードで活動する。
黒ガウナは白ガウナを元に開発された兵器。 - 戦翅甲蟲 天蛾
短編集”ブラム学園!アンドソーオン”に収録されている作品。
この作品でも人類とガウナの戦いが描かれているようです。
※すみません。未読のため詳細不明です!いずれ読みます!
スター・システムって?
一人の作家が、異なる作品内で同一の登場人物を様々な役柄で登場させる手法の事を言います。
※上記の意味はあくまでも創作分野での概念です。
僕なりの考察。まずは恒差廟について(以降ネタバレ注意!)
ネタバレ注意と書いておきながら、そもそもこの作品は全部内容を言われたってネタバレしようがないんですけどね。読んだ後でも謎のままだから。笑
でもまぁ考察と銘打ったので、とりあえずほかの作品や宗教的な名称をどうにか引用しながらそれっぽくまとめて行きたいと思います…では早速。
まず上記で紹介した恒差廟(ごうさびょう)、その廟の役割はいくつかあるようですが、人類を地球外へ脱出させる船”胞子船(ほうしせん)”を射出させる発射台のような目的のほかに、第四紀連の社員が”禁籠が解ける“という事を危惧していたため、また、結果的に大量の白ガウナがこの廟の中から解放されていたため、白ガウナをこの中に封じ込めるための装置でもあったようです。
※禁籠(キンロウ)とは、閉じこめて外に出さないこと。だそうです。
また、第四紀連以前の時代に造られたようですが、恒差廟は脱出船の発射台や、人類の脅威となる存在(ガウナ)の封印の役割があるという事は、人類が造った、人類のための装置である可能性が高い事が伺えます。
その”恒差廟”が上記の方に記載した、死者を祀る施設や場所を意味している”廟”であると仮定した場合、そこに封じ込められている白ガウナは、そこに祀られている存在という事になります。
そこで注目したいのは、人が白ガウナに転化した存在が”示現体(しげんたい)“と呼ばれていたことです。”示現”の意味を調べたところ「神仏が不思議な霊験をあらわすこと。奇跡。」とありました。かつての人類は、白ガウナの存在を、神(災厄?)のような存在として扱っていたのかもしれません。
また、恒差廟に白ガウナが封印されているという事は、かつての人類は”白ガウナ(示現体)”を恒差廟の中に封印(祀る)する手段を持っており、恐らくアバラの時点ではその封印する手段は失われているのではないかと考えられます。
というのも、黒ガウナは第四紀連が白ガウナを元に開発した兵器であり、アバラの作中での白ガウナの対処法は黒ガウナを使った強制的な”駆除”であり、封印とは異なります。
第四紀連よりも以前から存在していたとされる恒差廟の中に祀られていた白ガウナは、第四紀連ができる以前の歴史の中で封じられた可能性が高い。ということになります。
僕なりの考察。ではアバラの作品で語られた事とは。
他の作品からの引用的になるのですが有名なSF小説に”地球の長い午後“という作品があります。
この作品は近未来ではなく遠未来。めっちゃ遠い未来の地球が舞台になっています。
この作品の序盤で、主人公サイドの”人間達“が、作中の地球環境下ではかなり下位の存在に成り下がっていて、時折”鳥人“と呼ばれる、羽の生えた人型の種族に子供を奪われる危険と戦っているのですが、この鳥人は実は月面に住んでる進化した人類の姿で、地球上にいた主人公サイドの人間たちはいわば”取り残された群れ“みたいな存在だったのですね。
その群れは必死に植物や進化した自分たちと戦っていたのですが、月に行ってみると自分たちの今までの努力は何だったのか疑問になるような生活をしている新人類がそこにいたわけです。
僕はアバラで描かれている”白ガウナ”って実は進化した人類の姿なんじゃないかと思ってまして。ただ”示現体”と呼ばれているような状態では多くの人を食べてしまうため、人類からみたら災厄でしかないんですが、黒ガウナのような人型の形態では人間の生物としての完全体のような状態(新人類)となって、宇宙空間に適応できるって事なのかなと。
つまり、白ガウナを封印したり、黒ガウナを作って撃退していた人類のとっていた行動は、単に進化した人類を敵だと思って戦ってたわけですね!
というちょっと皮肉めいた話なのかな。と、考えました。
なので上記の僕の考えた理解を踏まえると、アバラのラストシーンは誰の目線から見るかによって良いのか悪いのかが変わるのかな?って事になるかと思います。
マチ子
印象に残ったシーン
印象に残ったシーン。ズバリ、上巻の終盤の方で、黒ガウナとなった那由多(なゆた)と白ガウナが戦うシーンですね。
示現体を倒すために投入されたけれど、実はもう一体人型の白ガウナがいて…という流れなのですが、まーー困っちゃうくらいかっこいいわけです。
この戦闘シーン何回読み返したかわからないくらいひたすら好きです。かっこよすぎる。ここで出てくる白ガウナもかっこよいんですねまた。
まぁとにかくアバラが好きです僕は。細かい話を抜きにしてもアバラが好き。
最後に
僕なんかの考察などでは、こいつ適当なこと抜かしてんじゃねーよとか思われそうで恐縮ですが、それでもそういうやり取りも含めて、様々な人の盛り上がりが生まれる事自体、僕は創作の醍醐味なんじゃないかなーと思ってます。
ですので、賛否両論大歓迎です。いろんな価値観で漫画、アニメ作品を盛り上げていけたら本望です。
ということで、全僕が激推しする最高にかっこよい作品”アバラ“の感想・考察でした!
…と言ってもアバラは現在残念な事に廃刊状態らしく…新品では売られていないようで、中古でも高値で取引されているため、少々手に入れづらい状況のようです。ですが、機会があったら是非とも読んでいただきたいです。
今回も、最後までお読みいただき、ありがとうございました!